2012/09/05

[Press]水中の低濃度の溶存態放射性セシウムを簡易・迅速に測定

- 福島県内の河川水中の溶存態放射性セシウム濃度を測定 -
  • 水1Lあたり0.01ベクレル(Bq)という低濃度の放射性セシウムを約30分で分析可能
  • プルシアンブルー担持不織布による環境水中の放射性セシウムの濃縮技術を開発
  • 福島県内の農業用水や河川水などのモニタリングや農作物への影響評価への貢献に期待
http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20120905/nr20120905.html



 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下「産総研」という)地圏資源環境研究部門【研究部門長 駒井 武】地圏環境リスク研究グループ 保高 徹生 研究員、川辺 能成 主任研究員、ナノシステム研究部門【研究部門長 八瀬 清志】グリーンテクノロジー研究グループ 川本 徹 研究グループ長は、日本環境科学株式会社【代表取締役 稲毛 重之】と連携し、農業用水や河川水(環境水)中の低濃度の溶存態(水に溶けている状態)放射性セシウムをプルシアンブルー担持不織布によって濃縮し、従来よりも迅速に分析できる技術を開発した。

 環境水中の放射性セシウムは主に溶存態と懸濁物質付着態が存在し、溶存態の放射性セシウムは植物に吸収されやすいことから注目されている。溶存態放射性セシウム濃度は、多くの場所で水1Lあたり0.2Bq(以下、Bq/Lと表記)以下と非常に低濃度であるため、本方法で用いるゲルマニウム半導体検出器では約6~13時間でも定量ができない。そのため、大量の水を長時間かけて濃縮し測定する必要があった。今回開発した技術により、水中の低濃度の溶存態放射性セシウムを、従来の1/10以下の前処理・測定時間(それぞれ約30分~1時間で可能)で、従来からの2Lの水を長時間測定する方法の1/10程度の濃度(0.01Bq/L)まで測定できるようになった。

 本方法を用いて福島県内の農業用水や渓流水をモニタリングした結果、溶存態の放射性セシウム濃度は0.01 Bq/L~0.09 Bq/L程度(全放射性セシウム濃度は0.17 Bq/L未満~2.9 Bq/L)と低濃度であることが確認された。福島県内の農業用水や森林からの流出水などの環境水中の放射性セシウムのモニタリングや農作物への影響評価、環境中の放射性セシウムの動態解析などへの貢献が期待される。