2013/09/07

[Paper]PBのセシウム吸着機構/Cs-Adsroption Mechanism of PB

Proton-exchange mechanism of specific Cs+ adsorption via lattice defect sites of Prussian blue filled with coordination and crystal water molecules
結晶水と配位水に満たされたプルシアンブルーの空孔サイトを通じたCs吸着におけるプロトンとの交換

Manabu Ishizaki,   Sayori Akiba,   Asako Ohtani,   Yuji Hoshi,   Kenta Ono,   Mayu Matsuba,   Takanari Togashi,   Katsuhiko Kanaizuka,   Masatomi Sakamoto,   Akira Takahashi,   Tohru Kawamoto,   Hisashi Tanaka,   Masayuki Watanabe,   Makoto Arisaka,   Takuya Nankawa and   Masato Kurihara 
Dalton Trans., 2013, 42, 16049-16055
DOI: 10.1039/C3DT51637G
Received 20 Jun 2013, Accepted 22 Jul 2013, Published online 22 Jul 2013

Selected as HOT ARTICLE in Dalton Transactions
Dalton TransactionsのHot articleに選ばれました!

プルシアンブルーのCs吸着機構模式図/Schematic view of Cs-adsroption mechanism by Prussian blue

  プルシアンブルー(PB)は放射性セシウム吸着材として非常に高い能力を示しますが、その吸着機構は完全に理解されているわけではありません。本論文では、自身で合成したPBと、市販品のPBの吸着能の違いに注目し、その理由を検討しました。PBの一般的な組成式は AxFe[Fe(CN)6]y・zH2Oと書けます。Aの種類や、x,y,zの値を制御することができます。合成PBは、Fe[Fe(CN)6]0.75・zH2O(z=2.5~3.75)でした。市販PBは、(NH4)0.63Fe[Fe(CN)6]0.91・1.54H2Oと違っています。もっとも大きな違いは、市販PBは合成PBに比べ、陽イオンとして、アンモニウムイオンが入っていることと、含水率が少ないことです。

  一般的には、陽イオンが含まれる方がセシウムをよく吸着すると考えられます。セシウム(Cs+)を吸着すると同時に他の陽イオンを放出すると、電荷的な変化がなく、静電エネルギーの損がないためです。しかしながら、実際に吸着試験を行うと、下図のように、合成PBの方がより多いセシウムを吸着することがわかりました。


市販PBと合成PBのCs吸着量/Cs-adsorption amount by synthesized & commercialized PB


 この理由を調べるために、様々な解析を行いました。そこで分かったのが、セシウム吸着時のpHの変化です。合成PBは、セシウムを吸着すると共に、pHが下がっていきます。これから、PBはセシウム吸着と同時に、水素イオン(H+)を放出すると言えます。つまり、Cs+とH+のイオン交換が起こっていると考えられます。

  ここからは推察ですが、PBの組成により、セシウム吸着能はかなり影響すると思われ、その大きな理由は内部の水にあると考えられます。PBはナノ粒子内と外に空間を持ち、それぞれに水が入る空間があります。さらに、ナノ粒子内部には、ジャングルジム状の結晶内の空間に含まれる結晶水と、[Fe(CN)6]が抜けた空孔に存在する配位水の二種類が存在します。 市販PBの含水率が少ないのは、[Fe(CN)6]空孔が少なく、結果として配位水が少ないためと推定されます。
 つまり、PBはその組成を制御し、[Fe(CN)6]空孔濃度を変えることにより、Cs吸着能をさらに向上させることが可能なわけです。
  [Fe(CN)6]空孔は、水に囲まれた空間になるため、CsがPB内を拡散していく道筋として利用されると共に、H+とCs+のイオン交換の起源になっていると考えています。すべてのCs吸着の起源がH+との交換であるかはわかりませんが、高吸着能の一因になっているのは確かであろうと思われます。