2010/03/26

[Press]ゲル電解質を用いたナノ粒子調光ガラス

-電子ペーパーなど省エネ型表示装置にも応用の可能性-
  • 電解質をゲル化してプルシアンブルー錯体ナノ粒子を用いた調光ガラスを改良
  • 製造工程を簡略化することができ、低価格化による普及を期待
  • ゲル電解質に白色粒子を混ぜて反射型にすると省エネ型表示装置にも応用可能
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2010/pr20100326/pr20100326.html



 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下「産総研」という)ナノテクノロジー研究部門【研究部門長 南 信次】分子ナノ物性グループ【研究グループ長 池上 敬一】の田中 寿 主任研究員、川本 徹 主任研究員は、国立大学法人 山形大学(以下「山形大学」という)と共に、プルシアンブルー錯体のナノ粒子を用いた調光ガラスの電解質をゲル化することに成功した。この調光ガラスは電気を流すことで、青色状態と無色透明状態を調整できるエレクトロクロミズムという現象を利用した素子である。ナノ粒子を含むエレクトロクロミック(EC)層、ゲル電解質層、封止材のすべてを塗布工程により作製できるようになり、製造工程が簡略化され、安価かつ効率的に、大面積の調光ガラスを製造できる。また、ゲル化により破損時の電解液漏れの可能性も減少する。なお、この調光ガラスは電源を切っても色が変わらないメモリー性を示す。

 電解質をゲル化すると一般にイオン伝導性が減少してしまい、エレクトロクロミック素子の応答速度も低下するが、今回開発したゲル電解質では、材料の組み合わせや混合比率を最適化することによって、応答速度の低下を防ぐことができた。また、ゲル電解質自体が可塑性を持つため、樹脂基板(ポリマーフィルム)と組み合わせるとフレキシブルなエレクトロクロミック素子が作製できる。
 さらに、ゲル電解質に酸化チタン粉末などの白色粒子を混入して素子の片面だけの表示を見せることができる。この素子はメモリー性を持つので電子ペーパーなどの省エネ型表示素子としても利用できる。