2013/07/09

[Press]農業用水用の低濃度放射性セシウム分析方法の開発

農水省からのプレス発表で、当グループが主となり開発した放射性セシウム濃度評価のためのセシウム回収ロボットが紹介されました

水田など浅い水深でも使用可能な放射性セシウム回収ロボット/ Robot for radioactive-Cs uptake from paddy field



農水省は「ほ場環境に応じた農作物への放射性物質移行低減対策確立のための緊急調査研究の成果について」のプレス発表を行いました。その一部として、当グループが主に担当した「農業用水用の低濃度放射性セシウム分析方法の開発」についても発表されました。

川や池などの放射性セシウム濃度は非常に低く、通常はすべて検出限界以下となっています。農作物への影響も、H24年度米全袋検査で基準値越えは0.0007%と、きわめて限定的な状況です。一方で、放射性セシウムへの不安という意観点からは、それが完全に払しょくされたわけではなく、除染が必要ではないか、と不安な方もおられます。私たちは、これらの不安を解消するには、どの程度放射性セシウムが含まれるか、を評価できることも重要であろう、と考え、これらの装置を開発してきました。

考え方は簡単です。通常の測定で放射性セシウムが検出限界以下となるのは、水に含まれるセシウムが非常に少なく、出てくる放射線も少ないためです。そのため、多量の水から放射性セシウムを濃縮してやれば、出てくるガンマ線も多くなり、測定が可能になります(濃縮といっても、測定できるぎりぎりまで濃縮するだけなので、全く危ない放射線量ではありません)。
浅い水深でも使用できる放射性セシウム回収用ロボットの構造/Schematic structure of the Robot for radioactive-Cs uptake from shallow water

ロボットの構造は、二つのセシウム回収部に、ポンプで通水するだけです。一つ目の回収部は、粘土粒子などに吸着している放射性セシウムを、粒子ごとフィルタで回収します。二つ目では、イオンとなっている放射性セシウムを、プルシアンブルーナノ粒子を担持させた不織布を利用して吸着します。

この考えに基づく放射性セシウム回収法は、産総研でこれまでにも開発してきた[関連1,関連2]ものですが、今回は、農業用水を対象とし、浅い水田の水を回収することや、濁水のような通水が難しい水でも回収できるよう、新しいロボットを開発しました。

また、長時間の平均濃度を測定するため、バッテリーなども内蔵し、勝手にセシウムを回収するようになっています。これがロボットと呼ぶ所以です。ただ、残念ながらASIMOのように、自分で判断して動くことはできません^^;

詳細は農水省のページから